芸術学セミナー(B)
セミナーの目的
芸術、デザイン、マンガなどの「作品」を語ることは難しい。なぜならば、絵には絵の、音楽には音楽の「ことば」--すなわち固有のメディア--があり、それを言語に完全に翻訳することは不可能だろうからだ。ただし、完全に言語化することは不可能だとしても、全くできないわけではない。
作品とは、感性的なものである以上、それだけで何かを人に訴える。しかし、そこに言語が少し介在することで、作品はいっそう明確なイメージを人に与えることにもなるはずである。「作品」のどこが言語化できるかを探ることは、どこが言語化できないかを浮き彫りにし、そのものに固有の何かを探し出すことにもなるだろう。
本セミナーを、どのように語れば、自分の作品の魅力や面白さを、他人にことばで伝えることができるかを一緒に考えていく場にしたいと考えているので、受講者の積極的な発言、質問を期待する。
セミナーの進め方
基本的に参加者の発表とディスカッションが中心となる。課題としては、3段階。
- これまで自らが作った作品の中から一点を選び、それのキャプションと作品紹介を書き、口頭で発表する
- その作品を、誰かの作品と比較して、自らの作品の特徴を浮かび上がらせる
- 以上の分析を、期末レポートとしてまとめる
予定(受講者数によって、変更あり)
- 教員による講義:作品を「記述」することとは?(最初の2〜3回)
- 美術史における「記述」:「様式」と「イコノグラフィ」
- 比喩としての作品タイトル
- 作品同士を「比較」することの意義
- 口頭発表の日程調整
- 履修者による口頭発表(一回のセミナーにつき2、3人)
- まず、これまで自らが作った作品の中から一点選ぶ
- それにキャプション(制作者名、作品タイトル、制作年、サイズ、メディア)をつける
- 作品を「記述」した原稿を書き、それを口頭で発表(10分程度)する(必ず原稿を書くこと。フリー・トークは厳禁)。
- 発表の際には、作品を投影するので、発表予定者は、予定日の前日の木曜日のオフィス・アワー(午前11時〜正午)までに、選んだ作品をコンピュータのデータのかたちで、教員の研究室まで提出すること。画像はJPEG形式【.jpg】、動画はQuick Time形式【.mov】やMedia Player形式【.wmv】が望ましい(PowerPointによるスライド・プレゼンテーションも可)。その他の形式については、教員に相談すること。
- ただし、自分でデータ化できないときは、作品(あるいはその写真など)を持ってくれば、A4サイズまではスキャン可能(それより大きい場合は、デジタル・カメラで撮影可能)。
- 履修者は、自分の先行する作品を一つ選んで(有名な作家によるものでもいいし、たとえば先輩の作品でもいい)、その作品と自らの作品を比較して、口頭発表する。
- 以下の要素を含んだ期末レポート(1500〜2000字程度)を書く
- 自分の作品の記述
- 先行作品の記述
- 自分の作品と先行作品を比較して、共通する点と異なっている点を明らかにする
- 上記の比較を踏まえた上で、自分の作品のどこが評価に値するかを述べる
評価基準
出席30%。発表30%、期末レポート40%(ただし、口頭発表をした履修者のみ、レポートを提出できる)