講読概要:文献講読(2)

  • 概要
    • 考古学や人類学などの領域において,物質文化(マテリアル・カルチャー)論は,以前より重要な方法論として存在してきた。文献を資料とする歴史学とは違って,それらの分野は,過去の遺品や,異文化において使われた物品など――すなわち「モノ」――を第一次資料として,研究の対象としてきた。たとえば現代人が使っているさまざまなモノも,また物質文化として研究対象となりうるのである。 
    • 美術史という研究領域も,絵画や彫刻といった「モノ」を研究対象/第一次資料として扱ってきた。ところが,美術作品――とくに絵画などの平面作品――は,実際に重みも厚みも具えたモノであるにもかかわらず,美術史においては,視覚的な側面のみが強調される傾向にある。これは,美術史にその源の一つを持つ視覚文化論(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)もまた陥りやすい陥穽である。とはいえ,モノやイメージの物質性と視覚性はお互い排除しあうものではない。たとえば絵画は物質性を具えるし,また陶器も視覚性を具えるのである。したがって,視覚文化論と物質文化論は,互いに補完しあう研究領域であると考えられよう。 
    • 本講読では,論集『写真・モノ・歴史(Photographs, Objects, Histories)』を講読文献として採りあげて,視覚イメージにおける物質性の問題を考えていきたい。
  • 授業計画
    1. イントロダクション:視覚文化と物質文化
    2. 講義:文化概念の変容:意味作用の実践
    3. 講義:視覚と触覚――痕跡とイメージ
    4. 講義:モノとコンテクスト
    5. 受講者による翻訳口頭発表(最終回まで)
  • 成績評価基準
    • 平常点 50% 出席およびテキストの訳を口頭発表。
    • 期末レポート試験 50%
  • 講読テクスト
    • エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート編『写真・モノ・歴史――イメージの物質性について』(第1章:エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート「序論――モノとしての写真」、第3章:ジェフリー・バッチェン「実体の消え失せる前に――写真と髪飾り」)
    • Elizabeth Edwards and Janice Hart, eds., Photographs Objects Histories: On the Materiality of Images (Material Cultures), London and New York: Routledge, 2004 (ch. 1=Elizabeth Edwards and Janice Hart, "Introduction: Photographs as Objects," and Geoffrey Batchen, "Ere the Substance Fade: Photography and Hair Jewellery.")]

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