- 同志社大学文学部 秋学期 文献講読(2)
- 水曜日5講時(16:45〜18:15)
- 今出川キャンパス 至誠館33号教室(http://www.doshisha.ac.jp/access/ima_campus.html)
- 概要
- 考古学や人類学などの領域において,物質文化(マテリアル・カルチャー)論は,以前より重要な方法論として存在してきた。文献を資料とする歴史学とは違って,それらの分野は,過去の遺品や,異文化において使われた物品など――すなわち「モノ」――を第一次資料として,研究の対象としてきた。たとえば現代人が使っているさまざまなモノも,また物質文化として研究対象となりうるのである。
- 美術史という研究領域も,絵画や彫刻といった「モノ」を研究対象/第一次資料として扱ってきた。ところが,美術作品――とくに絵画などの平面作品――は,実際に重みも厚みも具えたモノであるにもかかわらず,美術史においては,視覚的な側面のみが強調される傾向にある。これは,美術史にその源の一つを持つ視覚文化論(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)もまた陥りやすい陥穽である。とはいえ,モノやイメージの物質性と視覚性はお互い排除しあうものではない。たとえば絵画は物質性を具えるし,また陶器も視覚性を具えるのである。したがって,視覚文化論と物質文化論は,互いに補完しあう研究領域であると考えられよう。
- 本講読では,論集『写真・モノ・歴史(Photographs, Objects, Histories)』を講読文献として採りあげて,視覚イメージにおける物質性の問題を考えていきたい。
- 授業計画
- イントロダクション:視覚文化と物質文化
- 講義:文化概念の変容:意味作用の実践
- 講義:視覚と触覚――痕跡とイメージ
- 講義:モノとコンテクスト
- 受講者による翻訳口頭発表(最終回まで)
- 成績評価基準
- 平常点 50% 出席およびテキストの訳を口頭発表。
- 期末レポート試験 50%
- 講読テクスト
- エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート編『写真・モノ・歴史――イメージの物質性について』(第1章:エリザベス・エドワーズ、ジャニス・ハート「序論――モノとしての写真」、第3章:ジェフリー・バッチェン「実体の消え失せる前に――写真と髪飾り」)
- Elizabeth Edwards and Janice Hart, eds., Photographs Objects Histories: On the Materiality of Images (Material Cultures), London and New York: Routledge, 2004 (ch. 1=Elizabeth Edwards and Janice Hart, "Introduction: Photographs as Objects," and Geoffrey Batchen, "Ere the Substance Fade: Photography and Hair Jewellery.")]
- 参考文献
- 『美術フォーラム21』20号(特集:物質性/マテリアリティの可能性)
- 多木浩二『「もの」の詩学―家具、建築、都市のレトリック (岩波現代文庫)』
- 東京文化財研究所編『うごくモノ 「美術」以前の価値とは何か』
- ジェフリー・バッチェン『写真のアルケオロジー』(近刊)
- 他、講読中および本サイトで指示する。