文献の補足
安田先生からの回答
- Q:人間が音楽を作り出すために作った道具の限界によって、逆に人間の創造性が制限されているということなのか? 新しい音楽を生み出すためには、新しい道具の開発・発明が不可欠ということなのか?
- A:ヒトの創造性が、自分たちの作ったモノ(楽器)によって制約を受ける、というのはあり得ることだと思いますが、同時に、ヒトが自分の作ったモノを実際に使って不便(自分の求めている用途に合わない)だと感じて改良することが可能なように、モノ(楽器)も、常に特定の用途以外の使われかたというのを暗に提示しているのだと思います。楽器のかたちや操作性の変遷を500年くらいの長いスパンで見てみると、例えばギター(リュート)というものが常にかたちを変え、それにともなってそれを使う演奏者の演奏法やそれを使って出せる音の種類が大きく変わって来たことがわかると思います。
- 新しい音楽には新しい道具が不可欠、というのも、「新しい音楽」というのが、どの程度「あたらしい」のかにも依ると思いますが、うえのように考えると、必ずしも不可欠ではないと思います。それよりもいまある道具をどう新しく使うか、ということのような気もします。ターンテーブルを使ったスクラッチも、機械の誤動作から偶然生まれた音ですが、これがヒップホップDJという「新しい」音楽表現を生み出しました。ターンテーブルが、スクラッチがやり易いようにかたちを変え始めた(それ用のターンテーブルや針というのが発売された)のは、新しい音が生まれてからです。
- Q:音楽とは必ずしも内的解釈と外的解釈の二択で理解・分類出来るものではないのではないか? 流行やタレントのスキャンダルによって音楽は強制的に排除されてしまったりするのはなぜか?
- A:厳密にいえば内的・外的という分類に引っかからない音楽というのもあるのかも知れませんが、私は基本的にはこの分類に間違いはないと思います。流行(音楽の外側にある経済的な契機によりある曲やジャンルがもてはやされる)とかスキャンダルによる音楽の排除(音楽の外側にある政治的な契機によりある曲やジャンルが発売禁止になる)というのは、どちらも音楽の外にある要因が音楽そのものに影響を及ぼした例だと思います。
- Q:ANTにおいて、ヒト(もしくはモノ)の「意識」はどのように位置づけられているか?
- A:難しいです。「意識」という言葉をどう解釈するかによると思います。意欲とか志向性、ということであれば、ANTでは、「意識」というものがヒトやモノという容れ物の中に確固たるものとしてあって、その「意識」を持ってヒトやモノが他のヒトやモノとネットワークを作ってゆく、というような考え方をとりません。ヒトやモノがアクターとしてネットワークを構成し、そのネットワークが安定してくることで始めてヒトもモノもそういうものをはっきりと獲得するようになるのだと思います。
- モノとヒトが同じくアクターであると考えて、しかもそのアクターというもの自体が、実際には一時的に安定的に作用しているブラックボックスに過ぎず、そのさらに下位に様々なネットワークが存在しているというような入れ子構造をイメージしていただけるとわかり易いかも知れませんが、人間の身体も、それで常に安定したアクターであるわけではなく、病気したり肢体が不自由になれば、別のネットワークを構成することになるわけです。それにともなって、当然、それまでにそのヒトが他のアクターと築いていたネットワークの中での役割も変わってきます。そうした連鎖によって、そのヒトの意識は、そのヒトの身体の内側からも、その外側に展開していたネットワークの側からも、変化せざるを得ないわけです。
レポート課題
- 任意の都市(京都・横浜・東京・パリ……)と視覚/聴覚文化の関係について、リレー講義で触れられた論点を踏まえた上で論ずる。
- 引用元、情報の出典、参考文献(書籍、ウェブなど)は、文末にリストの形で必ず明記すること(下記の字数には含めない)
- 文献情報の書き方は以下を参照のこと
- A4用紙横書き(ワープロを推奨)
- 字数:2000〜3000字
- 引用元、情報の出典、参考文献(書籍、ウェブなど)は、文末にリストの形で必ず明記すること(下記の字数には含めない)
- 締切り:9月30日(金)午後5時
- 提出方法
- 京都精華大学の学生
- デザイン教務課
- その他、北仲スクール受講生
- 北仲スクール受付(担当:椋本)
- 京都精華大学の学生
本日の講義
- 都市とアート・フェスティヴァル
- 公共的ミュージアムの誕生
- パノラマの流行
- 1794:ロンドン、レスター・スクウェアにロバート・バーカーがパノラマ館を開設
- 万国博覧会
- 百貨店の誕生
- パサージュとマガザン・ド・ヌーヴォーテ→スペクタクルとしての商品
- 世界初の百貨店、ボン・マルシェ=「現代商業のカテドラル」(ゾラ)
- パリ大改造
- オスマン(セーヌ県知事)とナポレオン3世
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- 万国博覧会関連文献
- ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論 (岩波現代文庫)』
- 吉見俊哉『博覧会の政治学―まなざしの近代 (中公新書)』
- 吉田光邦編『万国博覧会の研究』
- 同編『図説万国博覧会史―1851‐1942』
- 松村昌家『水晶宮物語―ロンドン万国博覧会1851 (ちくま学芸文庫)』
- ヴォルフガンク・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史―19世紀における空間と時間の工業化』
- 万国博覧会関連文献