講読概要:文献講読(2)

講読の目的

  • 物質文化論入門
    • 考古学や人類学などの領域において,物質文化(マテリアル・カルチャー)論は,以前より重要な方法論として存在してきた。文献を資料とする歴史学とは違って,それらの分野は,過去の遺品や異文化において使われた物品など――すなわち「モノ」――を第一次資料として,研究の対象としてきた。それにとどまらず,現代人が使っているさまざまなモノも,また物質文化として研究対象となりうるのである。 
    • 美術史という研究領域も,絵画や彫刻といった「モノ」を研究対象/第一次資料として扱ってきた。ところが,美術作品――とくに絵画などの平面作品――は,実際に重みも厚みも具えたモノであるにもかかわらず,美術史においては,視覚的な側面のみが強調される傾向にある。こうした傾向は,美術史にその源の一つを持つ視覚文化論(ヴィジュアル・カルチャー)論もまた陥りやすい。とはいえ,モノやイメージの物質性と視覚性はお互い排除しあうものではない。たとえば絵画は物質性を具えるし,また陶器も視覚性を具えるのである。したがって,視覚文化論と物質文化論は,互いに補完しあう研究領域であると考えられよう。 
    • 本講読では,論集『アメリカの人工物--物質文化論集(American Artifacts: Essays in Material Culture)』の序論であるジュールズ・デイヴィッド・プラウン(Jules David Prawn)による「マテリアル・カルチャーの真実--歴史か,フィクションか?("The Truth of Material Culture: History or Fiction?")」という章を講読文献として採りあげて,物質性の諸問題を考えていきたい。また,「プラウン法」と呼ばれる視覚文化/物質文化の研究方法についても,併せて学びたい。

講読の進め方

  1. イントロダクション:視覚文化と物質文化
  2. 講義:文化概念の変容--意味作用の実践
  3. 講義:視覚と触覚--痕跡とイメージ
  4. 講義:モノの人生--転用・流用・ブリコラージュ
  5. 講読:講師による翻訳のモデル発表1
  6. 講読:講師による翻訳のモデル発表2
  7. 講読:受講者による翻訳の口頭発表1
  8. 講読:受講者による翻訳の口頭発表2
  9. 講読:受講者による翻訳の口頭発表3
  10. 講読:受講者による翻訳の口頭発表4
  11. 講読:受講者による翻訳の口頭発表5
  12. 講読:受講者による翻訳の口頭発表6
  13. 講読:受講者による翻訳の口頭発表7
  14. 講読:受講者による翻訳の口頭発表8
  15. 講読:受講者による翻訳の口頭発表9

成績評価基準

  • 平常点 50% 出席およびテキストの訳を口頭発表。
  • 期末レポート試験 50%

講読テクスト

  • ジュールズ・デイヴィッド・プローン、ケネス・ハートマン『アメリカの人工物--物質文化論集』
    • Jules David Prawn and Kenneth Haltman,eds., American Artifacts: Essays in Material Culture, Michigan State University Press, 2000.

American Artifacts: Essays in Material Culture

American Artifacts: Essays in Material Culture


https://satow-morihiro.hatenablog.com/


はてなダイアリーのサービス終了のため、講義情報ページをはてなブログに移行しました。以前の記事にアクセスすると、ここに自動的にリダイレクトされるようにしています。

19年度前期芸術学A視覚文化論デザイン論特講1デザイン理論特講(大学院)/a> 講演、特別講義など

前学期までの講義情報総合情報シラバス