- 文献購読(2):科学の視覚文化論
- 水曜日5限(16:40−18:10)
- 同志社大学今出川キャンパス 至誠館S34
- 同志社大学 シラバス検索/検索結果/文献講読(2)
購読の目的
視覚文化(ヴィジュアル・カルチャー)という概念には,絵画や彫刻などの芸術作品にとどまらず,写真や映画,テレビなどの複製技術,商品パッケージや広告などの商業イメージ,記念写真などの私的なイメージ群,さらにはさまざまなデジタル・イメージなども含まれる。本購読では,なかでも自然科学/生命科学における視覚文化に注目したい。
科学は,さまざまな仕方でさまざまな表象を利用する。数式,記号,文字テクストなど。なかでもグラフ,図やイラストレーション,写真や映像などの視覚的イメージは,科学を学習,研究,伝達する上で欠かすことができない表象である。とくに近代の臨床医学の領域では,写真をはじめとした視覚技術がその発展,深化において極めて重要な役目を果たしてきた。19世紀中盤の精神医学における写真の利用をはじめとして,19世紀の終わりにはX線撮影が登場し,その後,超音波検査,CT,MRIなどの現代におけるイメージング・テクノロジーに至る身体表象の諸技術は,その代表である。現時点での計画では,L. Pauwels, ed., Visual Culture of Sciencesに収められたX線写真についての論文(Bernike Pasveer, "Representing or Mediating: A History and Philospphy of X-Ray Images in Medicine")の購読を軸に,科学とイメージと身体の問題について,理解を深めていきたいと考えている(ただし受講生の興味に合わせ,相談の上で別のトピックについて扱った論文に変更する可能性もある)。 ←の予定を変更して、Marita Sturken and Lisa Cartwright, Practices of Looking: An Introduction to Visual Culture (Oxford University Press、2001)の第8章、"Scientific Looking, Looking at Science"を購読テクストとする。
はじめの数回は,視覚文化論の基礎,記号論やメディア論などの方法論,身体と視覚文化の問題などの講義を行う。続いて講師による翻訳のモデルを紹介し,そして受講者が順番に担当箇所の翻訳を口頭発表していくというかたちで進めていく。視覚文化へのアプローチの紹介だけではなく,翻訳のテクニックなども伝えて行きたいと考えている。
購読の進め方
- イントロダクション:視覚文化と物質文化
- 講義:文化概念の変容--意味作用の実践
- 講義:科学と視覚的コミュニケーション
- 講義:身体と視覚文化
- 講読:講師による翻訳のモデル発表
- 受講者による翻訳の口頭発表1 (最後まで)
評価
- 平常点50%、期末レポート50%
購読テキスト
Practices of Looking: An Introduction to Visual Culture
- 作者: Marita Sturken,Lisa Cartwright
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 2001/03/15
- メディア: ペーパーバック
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参考文献
- Luc Pauwels, ed., Visual Cultures of Science: Rethinking Representational Practices in Knowledge Building And Science Communication (Interfaces: Studies in Visual Culture)
- ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『アウラ・ヒステリカ―パリ精神病院の写真図像集』
- サンダー・ギルマン『健康と病―差異のイメージ』
- 橋下一径『指紋論 心霊主義から生体認証まで』
- その他、クラス内で紹介していきます。