講義概要
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- 本講座の目標は、都市における諸文化――視覚的、聴覚的、物質的――を「路上(ストリート)」をキー概念として読み解くところにあります。一つ目の問題は、路上のサブカルチャーはどのような戦術をもって都市と関わるのかということ。二つ目の問題は、路上の細部をスケッチや写真で蒐集する行為は都市の何を発掘しようとしているのかということ。この二つの問題からけっして単一の、統一された都市イメージには回収されえない都市の多義性を探っていきたいと考えています。
- <1日目講座概要>
- 初日は、60年代以降のストリート・カルチャーにおけるスタイル、音楽、行動という実践を手がかりに、都市における文化の多様性を探ります。戦後に登場する若者文化、映像や音の複製技術の進展がどのように都市と関わっていくのかを、芸術学、人類学などにおける文化・社会理論を参照しつつ検証します。
- 講義の流れ
- 11:00〜12:20 文化とは?――サブカルチャーと文化論的転回 〔担当講師: 佐藤 守弘〕
- 13:20〜14:40 We are Mods!――都市とストリート・トライブ〔担当講師: 佐藤 守弘〕
- 14:50〜16:10 ストリートの戦術――流用とブリコラージュ〔担当講師: 佐藤 守弘〕
- 16:20〜17:00 ダブ、ブレイク・ビーツ、リミックス――複製技術時代の文化〔担当講師: 荏開津 広・佐藤 守弘〕
1講時
- 文化とは?――サブカルチャーと文化論的転回
- 言語論的転回(Linguistic Turn)、文化論転回(Cultural Turn)以降の諸研究
- テクスト=テクスト研究:文学研究から
- イメージ=視覚文化(Visual Culture)論:美術史、文化社会学から
- J・A・ウォーカー&S・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門―美術史を超えるための方法論』
- モノ=物質文化(Material Culture)論:考古学、人類学から
- 音=聴覚文化(Auditory Culture)論:音楽学から
- 文化概念の変容
- 古典的定義
- 人類学的定義
- 「意味の共有」としての文化
- レイモンド・ウィリアムズ『完訳 キーワード辞典』
- 柳父章『文化 (一語の辞典)』
- スチュアート・ホール編『リプレゼンテーション――文化的表象と意味作用の実践』(Stuart Hall, ed., Representation: Cultural Representations and Signifying Practices, London: Sage/ Open University, 1997)、序章
- 西川長夫「文化と文明ーーその起源と変容」(『〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)』)
- イメージ/モノ/コトバとコンテクスト
- 言語学の三分野:意味論・統語論・語用論
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- 「《 ことば × 用いられた状況・コンテクスト → 意味 》という考え方のもとにことばの意味を研究するのが、語用論」(辻大介「http://www.d-tsuji.com/closet/5min/prg.htm」
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- 赤の意味作用
- 熱、禁止、共産主義、右チャンネル、女性、火
- 交通標識の意味作用
- 意味とコンテクスト:「石」を例にして
- 石×鉱物学研究室=鉱物標本
- 石×露地(茶の湯)=関守石(留石)
- 石×現代美術館=アート作品
- 石×床の間(弄石趣味)=水石
- 日本水石協会
- つげ義春「無能の人」1985~86年(『無能の人・日の戯れ (新潮文庫)』)
- 竹中直人監督『無能の人 [DVD]』
- 江戸期の好古趣味と「神代石」
- 内田好昭「神代石の収集」(『うごくモノ 「美術」以前の価値とは何か』)
- モノと分類学
- 言語学の三分野:意味論・統語論・語用論
- 言語論的転回(Linguistic Turn)、文化論転回(Cultural Turn)以降の諸研究
2講時
- We are Mods!――都市とストリート・トライブ
- サブカルチャー:ディック・ヘブディジ『サブカルチャー―スタイルの意味するもの』
- ドン・レッツ監督『サブカルチャー:イギリスの音楽とストリート・スタイルの独特の物語』
- イギリスのユース・サブカルチャー→スタイルを通じた反抗
- モッズというトライブ(族)
- Mod=Modern
- テッズ、ロッカーズ、モッズ、スキンヘッズ
- ディック・ヘブディジ『サブカルチャー―スタイルの意味するもの』
- テッド・ポレマス『ストリート・スタイル』
- ジョン・サベージ『イギリス「族」物語』
- 難波功士『族の系譜学―ユース・サブカルチャーズの戦後史』
- ブリコラージュとしてのストリート・スタイル
- ブリコラージュ=間に合わせ、あり合わせの素材と道具を用いて新しいモノを作り出す器用仕事のこと。本来は、部族社会における活動を指すが、現代の資本主義社会において、既製の商品を使って新たな意味を作り出す作業のこともいう。
- シチュアシオニストからパンクへ
3講時
- ストリートの戦術――流用とブリコラージュ
- 多義的な場としてのストリート
- シカゴのマックスウェル・ストリート:『ブルース・ブラザース [DVD]』/YouTube
- 天王寺の青空カラオケ:大阪天王寺公園裏の路上カラオケ - YouTube
- シチュアシオニスト・インターナショナルと「漂流」
- ハイレッド・センター「芸術のテスト」
- 転用とセミ=ラティス構造
- トゥリー構造とセミ=ラティス構造
- クリストファー・アレクザンダー「都市はツリーではない」
- 中谷礼仁「自尊心の強い少年」(『セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間』)
- 流用・転用・ブリコラージュ
- クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(Claude Lévi-Strauss, LA Pensee Sauvage)
- 宮本隆司『CARDBOARD HOUSES』
- 小田亮『レヴィ=ストロース入門 (ちくま新書)』も参照のこと
- 「ブリコラージュbricolage」と「コラージュcollage」の違い
- 場所と空間
- 消費者による生産
- 戦略(Strategy)と戦術(tactics)
- ミシェル・ド・セルトー『日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)』(Michel de Certeau,L' Invention Du Quotidien: 1: Arts de Faire)
- 多義的な場としてのストリート
4講時
- ダブ、ブレイク・ビーツ、リミックス――複製技術時代の文化
- 参考:ヴィム・ヴェンダース監督『都市とモードのビデオノート デジタルニューマスター版 [DVD]』
- 複製技術とは
- 機械的複製技術(Mechanical Reproduction)
- 1839:写真術(ダゲールによるダゲレオタイプ)
- 1841:ネガ=ポジ法(トルボットによるカロタイプ)
- 1877:録音技術(エディソンによるフォノグラフ)
- 1887:ディスク型録音装置(ベルリナーによるグラモフォン)
- 1895:映画(リュミエール兄弟によるシネマトグラフ)
- 1926:トーキー映画(ワーナー・ブラザーズによるヴァイタフォン)
- 参考:記録技術の年表 - Wikipedia(および通信技術の年表 - Wikipediaも)
- 1839:写真術(ダゲールによるダゲレオタイプ)
- 機械的複製技術(Mechanical Reproduction)
- 複製技術と「流用」
- 流用(アプロプリエーション)
- 美術作品や広告、写真など、特定の文脈で使われていた既製のイメージを採り上げ、それを別の文脈に置き直すことによって、新たな作品を作り出すこと
- レディ=メイドと芸術
- 流用(アプロプリエーション)
- さまざまな流用芸術
- ダダとネオ・ダダ
- ポップ・アート
- ポストモダン・アートとシミュレーショニズム