表象とメディア/芸術とメディア
- 火曜日2講時
講義の概要
- メディア(media)という単語の単数形、メディウム(medium)には、死者の言葉を現世に伝える「霊媒」という意味もあるように、それは発信者と受信者の「間」にあって、何らかのメッセージを運ぶ乗り物のような存在である。普段の生活ではあまり意識はされていないが、私たちはメディアを通じて、世界を理解し、世界にメッセージを送っている。本講義では、1990年代に従来の美術史に対する反省や、文化研究/文化社会学の影響下に脱領域的研究分野として成立した視覚文化研究(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)を批判的に再考し、風景/トポグラフィ、写真、考現学/路上観察、ヴァナキュラー文化などの具体的な事例を取り上げる。また美学芸術学はもとより、物質文化論や聴覚文化論などの隣接領域も視野に入れて、視覚文化研究の可能性を受講生と共に探っていきたい
講義の進め方
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- イントロダクション:メディア、イメージ、視覚文化
- 「文化」を理解する:記号、表象、意味、コンテクスト
- 視覚イメージとリテラシー:視覚的コミュニケーション、ヴィジュアル・リテラシー、ストーリー・マンガの文法
- 物語映画のリテラシー:モンタージュ(編集)、視線の力学
- 初期映画というモード:映画の発明、驚きとアトラクション
- 文化と表象の制度:ピクトグラム、デザイン、ジェンダー
- 広告の視覚文化論:コミュニケーション、イメージの機能、広告と「未来」
- 複製技術とイメージ:コピー、流用、ブリコラージュ
- 複製技術時代の音楽:ダブ、リミックス、ヒップ・ホップ(ブレイク・ビーツ)、聴覚文化論
- 写真と痕跡:記号論、痕跡/インデックス、修辞学
- 「モノ」としての写真:ヴァナキュラー文化、物質文化論
- 採集者の系譜:ストリート写真、考現学、路上観察
- 世界を視る写真:旅行写真、観光、万国博覧会
- 「古都」としての京都:トポグラフィ、観光、場所性
- まとめ
評価方法/基準
- 出席30%、レポート70%
参考文献
- 佐藤守弘『トポグラフィの日本近代―江戸泥絵・横浜写真・芸術写真 (視覚文化叢書)』
- ジョン・A・ウォーカー、サラ・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門―美術史を超えるための方法論』
- ジョン・バージャー『イメージ―視覚とメディア (ちくま学芸文庫)』
- 多木浩二『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読 (岩波現代文庫)』
- 島本浣、岸文和編『絵画のメディア学―アトリエからのメッセージ』