2日目の予定
1限
- 初日の振り返りと質問への回答
- 昨日紹介した文献
- 表情(facial expression)の記号論
- 縦スクロール・マンガ/ウェブトゥーン
- 韓国のウェブトゥーン:TBSラジオ ときめくときを。
- ムライ「鳥の眼」電脳マヴォ:ムライ作品集 トリコの本棚 鳥の眼/ムライ(『電脳マヴォ』)
- いま縦スクロールマンガを読むことは時代の生き証人になることだ | マンバ通信
- 東村アキコ『偽装不倫』
- 日本記号学会ウェブサイト
- medium:「メディウム」と「ミディアム」
- モダニズムとメディウムの固有性/ポストモダンとポピュラー文化
- クレメント・グリーンバーグ『グリーンバーグ批評選集』
- 脱マスメディア時代のポップ・カルチャー
- 秋庭史典「「ポップ」ってどういう意味なのだろうか」(『美学の事典』)
- 室井尚「ポップカルチャー研究の一般理論に向けての考察」(KAKEN_popculture_h28_p.pdf - Google ドライブ)
- 佐藤守弘「消費文化への両義的な対処法――マスメディア時代の「ポップ」再考」(UNPOPULAR POP報告書 – UNPOPULAR POP)
- 東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)』
- ボカロ:身体と機械
- 他者の文化を理解することは可能か
- 受講生のおすすめマンガ
2限
- 映画のリテラシー:物語映画の文法
- 19世紀視覚文化年表
- 1753 大英博物館開館
- 1791 ベンサム、パノプティコンを考案
- 1793 ルーヴル美術館開館
- 1794 バーカー、レスター・スクウェアにパノラマ館を開く
- 1798 パリ産業博覧会
- 1811 tourismの語の初出
- 1822 この頃からパサージュが次々と建造される
- 1825 ストックトン〜ダーリントン間に世界初の商用鉄道開通
- 1839 ダゲールによる写真の発明が科学アカデミーで公表
- 1841 トーマス・クック、最初のマス・トゥーリズムを企画
- 1842 イギリスにおいて鉄道の統合
- 1843 パリ=オルレアン間の鉄道開通
- 1849 ブリュースター、ステレオスコープを開発
- 1851 ロンドン万国博覧会
- 1852 パリにてボン・マルシェ開店
- 1853 オースマンのパリ大改造(〜70)
- 1863 クック、パリ、スイスへのパック旅行を企画
- 1867 パリ万国博覧会
- 1889 パリ万国博覧会(エッフェル塔)
- 1895 リュミエール、シネマトグラフ初上映
- 1896 第一回近代オリンピック開催
- ショットとは?
- ジョン・ヒューストン(監督)『マルタの鷹』
- リュミエール兄弟『シオタ駅への列車の到着』
- ショット/リヴァース・ショット(切り返し)
- 180度の法則=イマジナリー・ライン
- 主観ショットと客観ショット
- 感情移入と没入
- 動物に感情移入:セルゲイ・エイゼンシュテイン(監督)『全線:古きものと新しきもの』
- 無生物に感情移入スパイク・ジョーンズ(監督)『ランプ』(イケア社のCM、2003)
- 没入を阻害するカメラ(笑):メル・ブルックス監督・主演『新サイコ』
- 映画と「モンタージュ」=編集
- 19世紀視覚文化年表
3限
- 絵画のリテラシー:イコノグラフィとアレゴリー
- 表象の内容と形式
- 様式論/形式主義(フォーマリズム)
- イコノグラフィとイコノロジー
- イコノグラフィ=内容/意味の研究(⇔様式史=形式の研究)
- イコノロジー(図像解釈学)=絵画や彫刻などの芸術作品を読み解くことによりその背後にある意味内容と歴史的意識を探求していく研究方法。
- イコノロジーの三段階
- パノフスキーによる記述:ブロンツィーノ《逸楽の暴露》について
- ブロンツィーノ《ウェヌスとクピドによる寓意》1545年ごろ、ロンドン、ナショナル・ギャラリー所蔵 Bronzino (1503 - 1572) | National Gallery, London
- 『ギリシア・ローマ神話』神名対照表
- イコノグラフィの辞典
4限
- 視線と権力:イメージはどのように人を動かすか?
- 観者を見つめるイメージ:はたらきかける「視線」
- ジェンダーと視線
- ティントレット《スザンナの水浴》
- ストーリー:「美しい若妻スザンナが沐浴しているときに、長老二人が近寄り、言い寄った。しかし、スザンナは拒絶した。逆恨みした長老たちは、スザンナを姦通罪で訴え、スザンナは死刑になってしまいそうになる。そこで、預言者ダニエルは二人の長老を尋問し、矛盾を暴き、スザンナの無実が実証された。二人の長老は死刑となった」(旧約聖書ダニエル書外典より)。
- 3つのまなざし
- スザンナを「覗き見」る長老たちのまなざし=見返されることのない「非対称」のまなざし
- 鏡を見るスザンナのまなざし=自らを見る:男性のまなざしを内面化したまなざし
- 絵を見る観者のまなざし=メタ・レヴェルのまなざし:ポルノグラフィ?
- ジェンダー=社会的、文化的に定められた性差(男らしさ/女らしさなど):生物学的な性差(セックス)とは区別される。
- 男性優位のジェンダー構成においては、男性は見る主体であり、女性は見られる対象となる。
- 視線の主体である男性は、「見る」という行為によって女性という「他者」を性格づける。
- 男性(主体)は、女性(他者)に付与したそれぞれの性格(受動的、露出、イメージ、感情、神秘、自然…)の反対語(能動的、窃視、言語、理性、好奇心、文化…)を自らに付与する。
- 「主体」とは先験的に存在する物ではなく、「他者」との関係の網目のうちに構築される物である。
- 「男は行動し、女は見られる。男は女を見る。女は見られている自分自身を見る。これは男女間の関係を決定するばかりでなく、女性の自分自身に対する関係をも決定してしまうだろう。彼女の中の観察者は男であった。そして被観察者は女であった。彼女は自分自身を対象に転化させる。それも視覚の対象にである。つまりそこで彼女は光景となる」(ジョン・バージャー『イメージ: 視覚とメディア (PARCO PICTURE BACKS)』)。
- マネ《オランピア》の視線
- 「オリエンタリズム」と視線
- オリエンタリズム=ヨーロッパのオリエントに対する支配的言説の様式
- オリエントは…ヨーロッパ人の心のもっとも奥深いところから繰り返したち現れる他者イメージでもあった。そのうえオリエントは、ヨーロッパ(つまり西洋)がみずからを、オリエントと対照をなすイメージ、観念、人格、経験を有するものとして規定するうえで役だった(E・サイード『オリエンタリズム 上 (平凡社ライブラリー)』)。
- 視線の内面化
- 『パリ、テキサス』と視線のゲーム
5限
- 広告の視覚文化:欲望と資本主義
- 「欲求need」と「欲望desire」のちがい
- 「欲求は満足することができる。でも欲望は、決して満足しない。そして人間の活動は、そのほとんどがこうした「満たされない欲望」のうえに成立している。僕たちは自分の抱えた欲望を、そのつどちょっとずつ満たしてやることで、最終解決は先送りしながら生きている。〔…〕実はこういう欲望のメカニズムは、「資本主義」システムのそれとよく似ている。いろんな問題解決を常に先送りしながら成立しているこのシステムは、その究極的な解消がありえないことが、システム成立のための重要なよりどころになっている」
- 「いわゆる資本主義とは、交換過程の偶発的性格(交換の可能性がその場その場の個人的な欲求に依存すること)を克服するために、支払うものの欲求を身体的・生理的な領域から解放し、交換の動機付けとなる欲求〔=欲望?〕を自己創出する動的システムのことなのだ。〔…〕資本システムは広告という意味媒体によって差異を自己生産し、私たちの欲求を創出する」
- 広告=受容者の未来の行動を指示するイメージ
- 「広告の目的は、見る者の現実の生活に対して最大限の不満を抱かせようとするものである。その社会の生活様式への不満ではなく、自分自身の生活への不満である。この商品を買えばあなたの生活はより良くなると広告は提案する。広告は見る者により良い状態にあるもう一つの彼を示す」。
- 「あらゆる広告は不安をかきたてる。すべてのことはお金に集約され、お金を手に入れることがその不安を克服することである。いいかえれば広告がかりたてる不安とは、何も持たなければ、自分自身も何者でもなくなってしまうという不安である」。
- その定義からいって広告にとって現在は不十分なものである。〔……〕束の間の生命しかない広告イメージは未来形しか用いない。これを買えば、あなたは魅力的になるだろう。こうした環境で暮らせば、あなたの人間関係はすべて快調で輝かしいものになるだろう。〔……〕広告は未来形で語る。しかしその未来への到達は限りなく先へ延ばされる。それではどのようにして広告は、その広範な影響を及ぼす説得力を保つのだろうか。広告が説得力を失わないのは、広告の真実性が、その広告の約束することが本当に実現されるかによって判断されるのではなく、〈見る者=購買者〉に与える幻想がどれだけ有効性を持つかによって判断されるからである。広告は本質的に、現実とではなく白昼夢と結びつく」。
- ジョン・バージャー「広告の宇宙」(『イメ-ジ: 視覚とメディア (ちくま学芸文庫 ハ 23-2)』)
- 消費者に呼びかける広告
- ルイ・アルチュセール『再生産について 上 イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置 (平凡社ライブラリー)』
- ジュディス・ウィリアムソン『広告の記号論―記号生成過程とイデオロギー (1985年) (Culture critique books)』
- アンドルー・ゴードン『ミシンと日本の近代―― 消費者の創出』
- 病と健康のレトリック
- 佐藤守弘「医薬品――病気と健康のあいだに」(『開封・戦後日本の印刷広告: 『プレスアルト』同梱広告傑作選〈1949-1977〉』)
- 「欲求need」と「欲望desire」のちがい