芸術学 最終日

最終目の予定

  1. 2日日の振り返りと質問への回答
  2. 広告の視覚文化:欲望と資本主義
  3. 博覧会と百貨店:近代都市の成立 観光という視覚文化
  4. コンビニ展示論:コントロールされる欲望
  5. 全体のまとめ、レポート課題の提示

レポート課題

  • 任意の広告(ポスター、チラシ、雑誌・新聞内など)を1点選び、講義で扱ったさまざまな問題に留意しつつ、その広告を分析し、解釈してください。
    1. その広告を徹底的に観察して、記述(言語化)すること。何(対象)を、どのように表象しているのかを丁寧に記述してください。
    2. その記述をベースに文献を調べたり、他の広告と比較したりして、論理的に(担当講師が納得するように)分析、解釈してください。
    3. 必ずその広告を図版としてレポート内にレイアウトしてください。図版がなかったら点数下がります。
    4. 引用したり、参考にしたりした文献、資料などは注をつけて、文献情報をつけて明記すること。
      • 形式:A4用紙縦遣い、PDF
      • 字数:1500-3000字
      • 提出場所:UNIPA

1限

2限

  • 広告の視覚文化:欲望と資本主義
    • 「欲求need」と「欲望desire」のちがい
      • 「欲求は満足することができる。でも欲望は、決して満足しない。そして人間の活動は、そのほとんどがこうした「満たされない欲望」のうえに成立している。僕たちは自分の抱えた欲望を、そのつどちょっとずつ満たしてやることで、最終解決は先送りしながら生きている。〔…〕実はこういう欲望のメカニズムは、「資本主義」システムのそれとよく似ている。いろんな問題解決を常に先送りしながら成立しているこのシステムは、その究極的な解消がありえないことが、システム成立のための重要なよりどころになっている」
      • 「いわゆる資本主義とは、交換過程の偶発的性格(交換の可能性がその場その場の個人的な欲求に依存すること)を克服するために、支払うものの欲求を身体的・生理的な領域から解放し、交換の動機付けとなる欲求〔=欲望?〕を自己創出する動的システムのことなのだ。〔…〕資本システムは広告という意味媒体によって差異を自己生産し、私たちの欲求を創出する」
    • 広告=受容者の未来の行動を指示するイメージ
      • 「広告の目的は、見る者の現実の生活に対して最大限の不満を抱かせようとするものである。その社会の生活様式への不満ではなく、自分自身の生活への不満である。この商品を買えばあなたの生活はより良くなると広告は提案する。広告は見る者により良い状態にあるもう一つの彼を示す」。
      • 「あらゆる広告は不安をかきたてる。すべてのことはお金に集約され、お金を手に入れることがその不安を克服することである。いいかえれば広告がかりたてる不安とは、何も持たなければ、自分自身も何者でもなくなってしまうという不安である」。
      • その定義からいって広告にとって現在は不十分なものである。〔……〕束の間の生命しかない広告イメージは未来形しか用いない。これを買えば、あなたは魅力的になるだろう。こうした環境で暮らせば、あなたの人間関係はすべて快調で輝かしいものになるだろう。〔……〕広告は未来形で語る。しかしその未来への到達は限りなく先へ延ばされる。それではどのようにして広告は、その広範な影響を及ぼす説得力を保つのだろうか。広告が説得力を失わないのは、広告の真実性が、その広告の約束することが本当に実現されるかによって判断されるのではなく、〈見る者=購買者〉に与える幻想がどれだけ有効性を持つかによって判断されるからである。広告は本質的に、現実とではなく白昼夢と結びつく」。
    • 消費者に呼びかける広告
    • 病と健康のレトリック

3限

観光という視覚文化

4限

  • 博覧会と百貨店:近代都市の成立
    • 展示の6機能
      1. 指示的機能   見えない世界を指し示す
      2. 主情的機能   仲介者の思い/考えを伝える
      3. 働きかけ機能  観る人を動かす
      4. 交感的機能   展示の場を指向する
      5. メタ展示的機能 展示の諸コードを指向する
    • 博物学以降の展示
  • コンビニ展示論:コントロールされる欲望
    • 控えめなスペクタクル——非−場所としてのコンビニ
    • Convenience Storeから「コンビニ」へ
    • スーパーマーケットの誕生
    • コンビニの控えめなスペクタクル
    • コンビニと回遊
    • コンビニのメッセージ=働きかけ機能
      • 広告との比較
    • 消費社会から情報社会へ
    • 村田沙耶香コンビニ人間 (文春文庫)
      • コンビニの展示コード
    • コンビニの交感的機能
      • 「店の前面上部が発光しガラス越しに中がよく見える構造はどこも同じだ。天井に無数の蛍光灯が輝く店内は驚くほど明るい。二四時間開きっぱなしで営業していて必要最低限の物がいつでも買える。すべてが明るく均質な空間であり、夜も昼もない均等な時間が流れている」宮本隆治「コンビニ」(『10+1』No. 12、1998、INAX出版
    • 排除される触知的機能
    • コンビニとコミュニケーション:「個人」のための空間
      • 「誰一人として〔…〕常連化しないんです。互いに話もせずコミュニケーションもなく、黙々と集まってしまうという。〔…〕若者たちは真夜中に明るいところを見つけて、何となく入って、何となくなにかを求めているわけです。求めてるんだけど、コンビニエンスの中にはないんですね。〔…〕コミュニケーションしなくてもすむというのがコンビニエンスの特徴なんだけど、なんか夜中に明るいから、心のどこかにコミュニケーションを求めて入っちゃう」夏目房之介夏目房之介の講座 (ちくま文庫 な 13-4)
      • 「〔コンビニで10代、20代の若い世代は〕他者との関係から解放され、新しい商品や雑誌に没入することで「個人」の領域を確保する。〔…〕コンビニは、こうした〔店員と客、客同士のコミュニケーションで生まれる〕自己/他者の交流というよりも、自己/他者にスキマを精妙に作り出すことによって「個人」の境界を維持する空間ともいえる。〔…〕コンビニという消費空間は、若い世代にとっては、地域や家族から離れ、「個人」の楽しみを享受できる「解放の空間」といえるが、高齢者にとっては、地域や家族が機能しなくなってもひとりで生活を維持することができる「保護の空間」なのである。〔…〕つまり、ネットワークとしてのコンビニは、伝統的・土着的な地域社会や家族関係に準拠せず、労働/消費の両面において個人を支えることができる。〔…〕」(田中大介「現代日本のコンビニと個人化社会—— 情報化時代における「ネットワークの消費」」『日本女子大学紀要 人間社会学部』26、25−39)