最終目の予定
- 2日日の振り返りと質問への回答
- 広告の視覚文化:欲望と資本主義
博覧会と百貨店:近代都市の成立観光という視覚文化- コンビニ展示論:コントロールされる欲望
- 全体のまとめ、レポート課題の提示
レポート課題
- 任意の広告(ポスター、チラシ、雑誌・新聞内など)を1点選び、講義で扱ったさまざまな問題に留意しつつ、その広告を分析し、解釈してください。
- その広告を徹底的に観察して、記述(言語化)すること。何(対象)を、どのように表象しているのかを丁寧に記述してください。
- その記述をベースに文献を調べたり、他の広告と比較したりして、論理的に(担当講師が納得するように)分析、解釈してください。
- 必ずその広告を図版としてレポート内にレイアウトしてください。図版がなかったら点数下がります。
- 引用したり、参考にしたりした文献、資料などは注をつけて、文献情報をつけて明記すること。
- 形式:A4用紙縦遣い、PDF
- 字数:1500-3000字
- 提出場所:UNIPA
お知らせ
1限
- 2日日の振り返りと質問への回答
- 昨日紹介した文献
- レフ・マノヴィッチ『ニューメディアの言語 ――デジタル時代のアート、デザイン、映画 (ちくま学芸文庫 マ-51-1)』
- ロラン・バルト「作者の死」(『物語の構造分析』)
- 宇野常寛『リトル・ピープルの時代 (幻冬舎文庫)』
- 岡本健『アニメ聖地巡礼の観光社会学: コンテンツツーリズムのメディア・コミュニケーション分析』
- 佐藤良明『英文法を哲学する』
- 映画/動画とショット
- 「驚き/アトラクション」の美学:「アトラクションの映画」トム・ガニング – artscape/映像と情動:難波阿丹「映像「情動」論」(『「情動」論への招待: 感情と情動のフロンティア』)
- 他者と視線
- 「当事者性」の問題
- 「見られていないかもしれない不安」:北田暁大『増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫 キ 17-1)』
- パノプティコンとデザイン
- 動物(園)と視線
- ジョン・バージャー「なぜ動物を観るのか?」(『見るということ (ちくま学芸文庫)』)
- 工芸と民芸
- 佐藤道信『〈日本美術〉誕生 ――近代日本の「ことば」と戦略 (ちくま学芸文庫)』
- 北澤憲昭『アヴァンギャルド以後の工芸: 「工芸的なるもの」をもとめて』
- 軸原ヨウスケ、中村裕太『アウト・オブ・民藝 改訂版』
- 筋肉と電流
- 「キャンプ」の美学
- スーザン・ソンタグ「キャンプについてのノート」(『反解釈 (ちくま学芸文庫 ソ 1-1)』)
- キャンプ|美術手帖
- キャンプ (様式) - Wikipedia
- 昨日紹介した文献
2限
- 広告の視覚文化:欲望と資本主義
- 「欲求need」と「欲望desire」のちがい
- 「欲求は満足することができる。でも欲望は、決して満足しない。そして人間の活動は、そのほとんどがこうした「満たされない欲望」のうえに成立している。僕たちは自分の抱えた欲望を、そのつどちょっとずつ満たしてやることで、最終解決は先送りしながら生きている。〔…〕実はこういう欲望のメカニズムは、「資本主義」システムのそれとよく似ている。いろんな問題解決を常に先送りしながら成立しているこのシステムは、その究極的な解消がありえないことが、システム成立のための重要なよりどころになっている」
- 「いわゆる資本主義とは、交換過程の偶発的性格(交換の可能性がその場その場の個人的な欲求に依存すること)を克服するために、支払うものの欲求を身体的・生理的な領域から解放し、交換の動機付けとなる欲求〔=欲望?〕を自己創出する動的システムのことなのだ。〔…〕資本システムは広告という意味媒体によって差異を自己生産し、私たちの欲求を創出する」
- 広告=受容者の未来の行動を指示するイメージ
- 「広告の目的は、見る者の現実の生活に対して最大限の不満を抱かせようとするものである。その社会の生活様式への不満ではなく、自分自身の生活への不満である。この商品を買えばあなたの生活はより良くなると広告は提案する。広告は見る者により良い状態にあるもう一つの彼を示す」。
- 「あらゆる広告は不安をかきたてる。すべてのことはお金に集約され、お金を手に入れることがその不安を克服することである。いいかえれば広告がかりたてる不安とは、何も持たなければ、自分自身も何者でもなくなってしまうという不安である」。
- その定義からいって広告にとって現在は不十分なものである。〔……〕束の間の生命しかない広告イメージは未来形しか用いない。これを買えば、あなたは魅力的になるだろう。こうした環境で暮らせば、あなたの人間関係はすべて快調で輝かしいものになるだろう。〔……〕広告は未来形で語る。しかしその未来への到達は限りなく先へ延ばされる。それではどのようにして広告は、その広範な影響を及ぼす説得力を保つのだろうか。広告が説得力を失わないのは、広告の真実性が、その広告の約束することが本当に実現されるかによって判断されるのではなく、〈見る者=購買者〉に与える幻想がどれだけ有効性を持つかによって判断されるからである。広告は本質的に、現実とではなく白昼夢と結びつく」。
- ジョン・バージャー「広告の宇宙」(『イメ-ジ: 視覚とメディア (ちくま学芸文庫 ハ 23-2)』)
- 消費者に呼びかける広告
- ルイ・アルチュセール『再生産について 上 イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置 (平凡社ライブラリー)』
- ジュディス・ウィリアムソン『広告の記号論―記号生成過程とイデオロギー (1985年) (Culture critique books)』
- アンドルー・ゴードン『ミシンと日本の近代―― 消費者の創出』
- 病と健康のレトリック
- 佐藤守弘「医薬品――病気と健康のあいだに」(『開封・戦後日本の印刷広告: 『プレスアルト』同梱広告傑作選〈1949-1977〉』)
- 「欲求need」と「欲望desire」のちがい
3限
観光という視覚文化
- 鉄道と広告
- 国鉄/JR東海の観光キャンペーン史年表
- 1964 東海道新幹線開通
- 1968 「ヨンサントオ」ダイヤ大改正 →SLブーム
- 1970 大阪万博 「ディスカバー・ジャパン」 『an・an』『non-no』創刊
- 1978 「いい日旅立ち——DISCOVER JAPAN 2」
- 1984 「エキゾチック・ジャパン」
- 1987 国鉄分割民営化 「シンデレラ・エクスプレス」(以降エクスプレス・シリーズ×7)
- 1993 「そうだ 京都、行こう。」
- クリスマス・エクスプレスの頃
- 「ディスカバー・ジャパン」キャンペーン
- 構築される京都
- 沖縄と観光
- 戦後沖縄観光の歴史
- 沖縄海洋博
- 多田治『沖縄イメージの誕生―青い海のカルチュラル・スタディーズ』
- エキゾティックな場所としての沖縄
- 国鉄/JR東海の観光キャンペーン史年表
4限
- 博覧会と百貨店:近代都市の成立
- 展示の6機能
- 指示的機能 見えない世界を指し示す
- 主情的機能 仲介者の思い/考えを伝える
- 働きかけ機能 観る人を動かす
- 交感的機能 展示の場を指向する
- メタ展示的機能 展示の諸コードを指向する
- 博物学以降の展示
- パノプティコンからパノラマへ
- 遊歩者と移動的視覚
- 「パノラマ〔…〕はパノプティコンとは異なる目的をもつ建築=装置で、観察者=主体を閉じ込めるのではなく、移動させることを意図していた。
- 「世界中から集められたあらゆる種類」の「屋内の見世物」であるパノラマは、「周囲の風景」を用いて、人工的などこか別の場所をパノラマ鑑賞者のために作り出した」。アン・フリードバーグ『ウィンドウ・ショッピング: 映画とポストモダン (松柏社叢書 言語科学の冒険 10)』
- 遊歩者と移動的視覚
- 万国博覧会
- 「万国博覧会は商品という物神〔フェティッシュ〕への巡礼所である。……万国博覧会は商品の交換価値を美化する。博覧会が作る枠組みのなかでは、商品の使用価値が背景に退く。博覧会は幻像〔ファンタスマゴリー〕を繰り広げ、人間は気晴らしを求めてそのなかへはいってゆく」(ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション (1) (ちくま学芸文庫 ヘ 3-1)』)
- 百貨店の誕生
- パリ大改造と視覚的都市の誕生:1853〜1870:セーヌ県知事、オスマンによる
- パサージュとマガザン・ド・ヌーヴォーテ(流行品店)→スペクタクルとしての商品
- 世界初の百貨店、ボン・マルシェ=「現代商業のカテドラル」(ゾラ)
- 薄利多売、現金正価、入店自由、返品可
- パノプティコンからパノラマへ
- 展示の6機能
- コンビニ展示論:コントロールされる欲望
- 控えめなスペクタクル——非−場所としてのコンビニ
- Convenience Storeから「コンビニ」へ
- スーパーマーケットの誕生
- コンビニの控えめなスペクタクル
- コンビニと回遊
- コンビニのメッセージ=働きかけ機能
- 広告との比較
- 消費社会から情報社会へ
- 村田沙耶香『コンビニ人間 (文春文庫)』
- コンビニの展示コード
- コンビニの交感的機能
- 排除される触知的機能
- コンビニとコミュニケーション:「個人」のための空間
- 「誰一人として〔…〕常連化しないんです。互いに話もせずコミュニケーションもなく、黙々と集まってしまうという。〔…〕若者たちは真夜中に明るいところを見つけて、何となく入って、何となくなにかを求めているわけです。求めてるんだけど、コンビニエンスの中にはないんですね。〔…〕コミュニケーションしなくてもすむというのがコンビニエンスの特徴なんだけど、なんか夜中に明るいから、心のどこかにコミュニケーションを求めて入っちゃう」夏目房之介『夏目房之介の講座 (ちくま文庫 な 13-4)』
- 「〔コンビニで10代、20代の若い世代は〕他者との関係から解放され、新しい商品や雑誌に没入することで「個人」の領域を確保する。〔…〕コンビニは、こうした〔店員と客、客同士のコミュニケーションで生まれる〕自己/他者の交流というよりも、自己/他者にスキマを精妙に作り出すことによって「個人」の境界を維持する空間ともいえる。〔…〕コンビニという消費空間は、若い世代にとっては、地域や家族から離れ、「個人」の楽しみを享受できる「解放の空間」といえるが、高齢者にとっては、地域や家族が機能しなくなってもひとりで生活を維持することができる「保護の空間」なのである。〔…〕つまり、ネットワークとしてのコンビニは、伝統的・土着的な地域社会や家族関係に準拠せず、労働/消費の両面において個人を支えることができる。〔…〕」(田中大介「現代日本のコンビニと個人化社会—— 情報化時代における「ネットワークの消費」」『日本女子大学紀要 人間社会学部』26、25−39)