夏期スクーリング「芸術研究9:視覚文化論」【前川修、熊倉一沙、林田新、秋吉康晴と共担】
概要
- 授業の目的
- 視覚文化研究(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)という新たな学問潮流を、イギリスの大学で使用されている教科書を基に概観する。「視覚文化」には、いわゆる美術のほか、写真、映画、テレビ、広告、マンガ、ファッション等、幅広い対象が含まれる。私たちはこうした視覚的イメージを、どのようにして見、どのようにして理解しているのだろうか。本講義の目指すところは、視覚文化を理解する能力(ヴィジュアル・リテラシー)を分析し、それを批判的に読解する能力を与える点にある。写真や映画を中心に具体的な事例を取り上げつつ、こうした対象を分析、考察するための「理論」や「方法論」(記号論、構造主義、精神分析、フェミニズム、ポストコロニアリズム)も批判的に検討する。
- テキスト
- ジョン・A・ウォーカー、サラ・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門―美術史を超えるための方法論』晃洋書房、2001年。
- 授業計画
- 10日
- 1-1 佐藤:序論/カルチャーとは?
- 1-2 前川:ヴィジュアルとは?
- 1-3 前川:ヴィジュアル・リテラシーとイメージの文法
- 1-4 熊倉:イメージのレトリック
- 11日
- 2-1 前川:視線・まなざし・監視
- 2-2 熊倉:視覚文化の流通1――引札と広告
- 2-3 林田:視覚文化の流通2――ドキュメンタリー
- 2-4 前川:視覚文化における快
- 12日
- 3-1 佐藤:視覚文化の生産と制度
- 3-2 秋吉:ポピュラー文化とメディア
- 3-3 佐藤:視覚文化とコンテクスト
- 3-4 佐藤(講師全員):補足、質疑応答
- 10日
- 主要参考文献
- ウィリアム・アイヴィンス『ヴィジュアル・コミュニケーションの歴史』白石和也訳、晶文社、1984年(絶版)
- 岩本憲児、武田潔、斉藤綾子編著『「新」映画理論集成〈1〉歴史・人種・ジェンダー (歴史/人種/ジェンダー)』/『「新」映画理論集成〈2〉知覚・表象・読解 (知覚/表象/読解)』フィルムアート社、1999年
- 岸文和、島本浣編『絵画のメディア学―アトリエからのメッセージ』昭和堂、1998年
- ポール・ドゥ・ゲイ他『実践カルチュラル・スタディーズ―ソニー・ウォークマンの戦略』暮沢剛巳訳、大修館書店、2000年
- 佐藤卓己『現代メディア史 (岩波テキストブックス)』岩波書店、1998年(追加)
- ジョン・バージャー『イメージ Ways of Seeing―視覚とメディア (パルコ・ピクチャーバックス)』伊藤俊治訳、PARCO出版、1986年
- マルコム・バーナード『アート、デザイン、ヴィジュアル・カルチャー―社会を読み解く方法論』永田喬、菅靖子訳、アグネ承風社、2002年
- ハル・フォスター編『視覚論 (平凡社ライブラリー)』榑沼範久訳、平凡社、2000年
- 西村清和『現代アートの哲学 (哲学教科書シリーズ)』産業図書、1995年
- ジル・モラ『写真のキーワード―技術・表現・歴史』青山勝、小林美香、佐藤守弘、前川修訳、昭和堂、2001年
- 吉見俊哉編『メディア・スタディーズ (serica archives)』せりか書房、2000年
- ジョゼフ・チルダーズ、ゲーリー・ヘンツィ『コロンビア大学 現代文学・文化批評用語辞典 (松柏社叢書 言語科学の冒険)』杉野健太郎訳 、松柏社、1998年
予定(佐藤初日担当分)
- 1-1:カルチャーとは?
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- 視覚に関わることを研究する諸領域
- 美学、芸術学、美術史
- デザイン史、写真史、建築史
- 哲学、文学研究、歴史学
- 視覚人類学、文化社会学、カルチュラル・スタディーズ
- 精神分析、認知心理学
- 視覚文化論という研究領域に影響を与えた研究
- ニュー・アート・ヒストリーとカルチュラル・スタディーズ
- モダニズムとポストモダニズム
- ジェンダー研究、ポストコロニアル研究
- 視覚に関わることを研究する諸領域
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- 文化論的転回(カルチュラル・ターン)
- 「文化」の定義
- 古典的定義
- 人類学的定義
- 「意味の共有」:コンテクスト(文脈/脈絡)と意味作用
- 「文化」の定義
- 文化論的転回(カルチュラル・ターン)
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- オーディエンス/読者/使用者の問題
- 今和次郎と「建築外の建築」(川添裕『今和次郎―その考現学』)
- 「場所」と「空間」(ミシェル・ド・セルトー『日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)』)
- オーディエンス/読者/使用者の問題