第1回

イントロダクション

展覧会紹介

  • 時の宙づり--生と死のあわいで Suspending Time: Life--Photography--Death (IZU PHOTO MUSEUM|展覧会
    • 会期:2010年4月3日(土)〜8月20日(金)
    • 開館時間:10:00-18:00
    • 休館日:毎週水曜日(祝日の場合は翌日休)
    • 展覧会場:IZU PHOTO MUSEUM
    • 「時の宙づり―生と死のあわいで」は、写真の歴史の中でしばしば見過ごされてきたような、日常的な写真にスポットライトを当てています。国際的に注目を集める写真史家、ジェフリー・バッチェン氏によって企画された本展は、そのような“忘れられた写真”の意義を考察する日本で初めての本格的な展覧会となります。無名の職人や家族の手によって作られたそれらの写真の多くは、調度品や装身具として日常的に触れられたり、家庭の中で亡き人を偲ぶよすがとなってきました。遺された写真にさまざまに手を加えることで、そこに特別なまなざしを注いできた人々の思いを垣間見ることができます。デジタル写真と異なる、モノとしての存在感を強く発する「ヴァナキュラー(ある土地に固有)写真」の魅力をご堪能下さい。
      • 欧米のダゲレオタイプ銀板写真)、写真付きアクセサリー、メキシコの写真彫刻、日本の湿板写真、アルバムのスナップ写真など日本初公開の計300点以上を展示予定。
    • ジェフリー・バッチェン(Geoffrey Batchen)
      • 写真史家。ニューヨーク市立大学教授。氏が企画した「Forget Me Not: Photography and Remembrance」展は2004年のファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)を皮切りに世界各地を巡回。編著に「Burning with Desire: The Conception of Photography」(The MIT Press, 1997)、「Each Wild Idea: Writing, Photography, History」(The MIT Press, 2001)、「William Henry Fox Talbot」(Phaidon, 2008)、「Photography Degree Zero: Reflections on Roland Barthes’s Camera Lucida」(The MIT Press, 2009)など他。代表作である「Burning with Desire」は、青弓社より2010年春『写真のアルケオロジー』(前川修/佐藤守弘/岩城覚久訳)として刊行予定。
      • 館が国立近代美術館京都分館から京都国立近代美術館となった1967年に、わずか3点の所蔵作品から開始されたコレクションは、2010年3月の時点で、約1万点の作品、資料を有する大きなものに成長しました。数多くの優品が含まれるこのコレクションの中には、技法や素材で分類する従来の区分では語りきれない「その他」(1978年度開始)という興味深い作品群があります。美術と建築・デザイン、彫刻と写真・映像などが多様な形で重なり合う「その他」の作品と、それらと直接的に関係する他区分の作品とを併せ、約300点の所蔵品によって、京都国立近代美術館が「その他」という枠組みの中で創り上げてきた、コレクションの中のもう一つの物語を紹介します。

シンポジウム紹介

第1回 ポピュラー・カルチャーシンポジウム

    • 模倣とは、古今東西、さまざまな文化的実践の根底にある行為であると言えよう。たとえば西洋や日本の絵画学習において、先行作品のコピーが基礎に置かれていたことや、陶磁器の制作における「うつし」の実践を思い浮かべればよい。とはいえそれは、何よりも独創性を重んじる近代的芸術概念と摩擦を引き起こすことが往々にしてある。さらに写真や録音などの複製技術の発達は、他者の文化的生産物を、ほぼそのままの形で、流用することを可能にした。それは一方では剽窃=パクリという概念によって罪として糾弾されながら、他方ではブリコラージュやパスティーシュといった対抗的文化戦術として評価されることもある。いったい私たちは、〈模倣〉や〈流用〉とどのようにつきあっていけばよいのだろうか。本パネルでは、ポピュラー文化における〈パクリ〉の諸相から、さらに法や経済の問題、あるいは日常的実践での模倣現象まで、幅広い視点から、この問題を討議していきたい。
    • 基調報告
      • 伊藤 公雄京都大学教授)「(メタ)複製技術時代の/とDIY文化」
        • 20世紀の複製技術時代は、ポピュラ―・カルチャーの創造と受容のあり方を大きく変化させた。特にメデイア・テクノロジーの発達は、自前(DIY)の個人的・集団的な文化創造の可能性を大きく広げることになった。本報告では、ベンヤミン中井正一などの古典的議論を再度振り返りつつ、60年代のDIY的文化運動の動向や、「審美的個人主義」の時代とも呼ばれる現代社会における、集団的な、かつ自前の文化創造の可能性について考えてみたい。
    • 報告/パネルディスカッション
      • 増田 聡大阪市立大学准教授)「パクリ─ポピュラー音楽の場合」
        • 「パクリ」とは、戦後の闇市から浮上した経済詐欺を示す語であったが、80年代後期のバブル期を境目に、文化的生産物の剽窃行為を意味する語へと変容していった。その背景には、文化を財物のメタファーで捉えようとする視線のはたらきがある。物理的な媒体を離れて容易に複製・変形される性質を持つ音楽は、この文化の財産化の論理としばしば摩擦をきたすだろう。本報告では、パクリと名指され騒ぎとなった音楽を数例取り上げ、その摩擦の諸相を検討する。
      • 山田 奨治国際日本文化研究センター准教授)「〈パクリ〉はミカエルの天秤を傾けるか?─罪の軽重をお金で考えてみる」
        • 最後の審判の日に、大天使ミカエルは天秤で死者の罪の軽重を量るという。〈パクリ〉という〈罪〉の重さを量る天秤は、ここ25年ほどのあいだにずいぶんと傾きやすいものに取り替えられたようだ。著作権侵害の罰金額は、84年には物価上昇を理由に引き上げられたが、その後は経済実態とは異なる理由で罰金額の引き上げがつづいている。いまや個人に対する罰金の上限額は84年以前の33倍、法人に対しては1000倍になっている。その歴史を振り返りながら、〈罪の経済学〉の裏に潜む思想や政治性を考えてみたい。
      • 杉本 バウエンス・ジェシカ京都精華大学准教授)「インターネット忍者の美学」
        • バガボンド』、『NARUTO』等の多くの海外ファンを魅了する武道系マンガ。読者は「忍者」や「侍」という象徴にあこがれ、自らその生き様を模倣しようとする。彼らの想像の中で膨らんでゆく、伝統的で純粋な日本男子像。そういったファンのインターネットコミュニティ内では、武道系の映画作品から陰謀説まで幅広いテーマについて熱く議論されている。彼らの独特な美学、ジェンダー感。理想の東洋・日本男子像に彼らは何を求めているのか。彼らが来日する際には、どんな期待を抱いて来るのか。また、それを自分のアイデンティティとしてどうやって結びつけているのか。それぞれの「男のロマン」を追求していく。そして、彼らファンのあこがれを逆手にとるような、皮肉に満ちあふれた批判的な作品(石田達也作『Sinfest』の「忍者劇場」をはじめとした数々のパロディ作品)についての考察も行う。
      • 細馬 宏通滋賀県立大学教授)「模倣する身体」
        • 日常会話では、模倣はごくありふれた現象である。模倣にあたって、模倣者はモデルのすべてを「コピペ」するのではなく、ある形質に注意を向け、限られた形質をなぞろうとする。模倣行為は、模倣者がモデルの何に注目し、何を見落としたかを、模倣者の身体を通して顕わにする。モデルの行動と模倣行動との間には緊密な時間関係が生じ、模倣行動は微調整される。本発表では、会話における模倣の観察を通じて、いわゆる「パクリ」問題で捨象されがちな模倣現象の諸相を指摘する。

https://satow-morihiro.hatenablog.com/


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