自己紹介
シラバス
- テーマ:視覚文化を読み解く:メディア・記号・表象
- 授業の概要:本講義では、視覚文化論(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)という研究分野を概観する。「視覚文化」には、いわゆる美術のほか、写真、映画、テレビ、広告、マンガ、ファッション等、幅広い対象が含まれる。私たちはこうした視覚的イメージを、どのようにして見、どのようにして理解しているのだろうか。私たちを取り巻くこうした視覚文化の数々を読み解くための方法を、さまざまな実例とともに考えたい。
- 授業計画
- 初日
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- イントロダクション:視覚文化とは
- 視覚文化をどのように考えるのか:社会のなかでのイメージ
- 「文化」とは一体何なのか:共有された意味としての文化
- メディウムとメディア:文化と媒介
- 記号と表象:意味とコンテクスト
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- 二日目
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- 三日目
講義
- 視覚文化論とは?
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- 視覚に関わることを研究する諸領域
- 美学、芸術学、美術史
- デザイン史、写真史、建築史
- 哲学、文学研究、歴史学
- 視覚人類学、文化社会学、カルチュラル・スタディーズ
- 精神分析、認知心理学
- 言語論的転回(Linguistic Turn)、文化論転回(Cultural Turn)以降の諸研究
- テクスト=テクスト研究:文学研究から
- イメージ=視覚文化(Visual Culture)論:美術史、文化社会学から
- J・A・ウォーカー&S・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門―美術史を超えるための方法論』
- モノ=物質文化(Material Culture)論:考古学、人類学から
- 音=聴覚文化(Auditory Culture)論:音楽学から
- 視覚に関わることを研究する諸領域
- 視覚的(visual)なもののリテラシーとコミュニケーション
- ヴィジュアル・リテラシー=視覚的読解能力
- リテラシー(Literacy)=文字を読み書きする能力
- Letter(文字)、Literature(文学)などと同語源
- 「見る」ことと「分かる」こと
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- オリヴァー・サックス「『見えて』いても『見えない』」(『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)』)
- ユクスキュル『生物から見た世界 (岩波文庫)』
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- ヴィジュアル・リテラシー=視覚的読解能力
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- 交通標識の文法構造=目的語(絵)+動詞の命令形(青=許可する、黄=注意せよ、赤=禁止する)
- ライアン・アブドゥラ、ローゲル・ヒュープナー『SIGN,ICON and PICTOGRAM―記号のデザイン』
- 道路標識→道路標識何でもコーナー | KICTEC/道路:道路標識等 - 国土交通省
- マンガのリテラシー
- マンガのレヴェル構成:作品全体→見開きページ→コマ
- コマの構成要素:イメージ・記号・テクスト
- 形喩と効果線
- 記号と指示対象:アイコン・インデックス・シンボル
- 形喩、音喩、吹き出しとセリフ
- 交通標識の文法構造=目的語(絵)+動詞の命令形(青=許可する、黄=注意せよ、赤=禁止する)
- まなざし/視線と監視
- 観者を見つめるイメージ:はたらきかける「まなざし」
- 選挙ポスターとまなざし
- 絵画のなかのまなざしの往還:ティントレット《スザンナの水浴》におけるまなざし
- 「ジェンダー」とまなざし
- ジェンダー=社会的、文化的に定められた性差(男らしさ/女らしさなど):生物学的な性差(セックス)とは区別される。
- 男性優位のジェンダー構成においては、男性は見る主体であり、女性は見られる対象となる。
- 視線の主体である男性は、「見る」という行為によって女性という「他者」を性格づける。
- 男性(主体)は、女性(他者)に付与したそれぞれの性格(受動的、露出、イメージ、感情、神秘、自然…)の反対語(能動的、窃視、言語、理性、好奇心、文化…)を自らに付与する。
- 「主体」とは先験的に存在する物ではなく、「他者」との関係の網目のうちに構築される物である。
- 「男は行動し、女は見られる。男は女を見る。女は見られている自分自身を見る。これは男女間の関係を決定するばかりでなく、女性の自分自身に対する関係をも決定してしまうだろう。彼女の中の観察者は男であった。そして被観察者は女であった。彼女は自分自身を対象に転化させる。それも視覚の対象にである。つまりそこで彼女は光景となる」(ジョン・バージャー『イメージ Ways of Seeing―視覚とメディア (パルコ・ピクチャーバックス)』)。
- 監視と視線の内面化
- パノプティコン(一望監視装置)=J・ベンサムが発案した監獄
- 中央の監視塔は鎧戸になっている→囚人からすると、看守がいるかいないかは分からない。
- つねに監視されている心理状態になる/自らが自らの看守となる→視線の内面化
- 参考資料:ミシェル・フーコー『監獄の誕生 ― 監視と処罰』
- パノプティコン(一望監視装置)=J・ベンサムが発案した監獄
- 映画『パリ、テキサス [DVD]』における視線のゲーム