芸術学 初日

シラバス

  • テーマ:視覚文化を読み解く:メディア・記号・表象
  • 授業の概要:本講義では、視覚文化論(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)という研究分野を概観する。「視覚文化」には、いわゆる美術のほか、写真、映画、テレビ、広告、マンガ、ファッション等、幅広い対象が含まれる。私たちはこうした視覚的イメージを、どのようにして見、どのようにして理解しているのだろうか。私たちを取り巻くこうした視覚文化の数々を読み解くための方法を、さまざまな実例とともに考えたい。
  • 授業計画
    • 初日
    1. イントロダクション:視覚文化とは
    2. 視覚文化をどのように考えるのか:社会のなかでのイメージ
    3. 「文化」とは一体何なのか:共有された意味としての文化
    4. メディウムとメディア:文化と媒介
    5. 記号と表象:意味とコンテクスト
    • 二日目
    1. 写真の記号論:痕跡とインデックス
    2. デスマスク、影絵、聖顔布:痕跡の系譜
    3. 遺影写真とヴァナキュラー写真
    4. ヴァナキュラー文化論
    5. ブリコラージュと「野生の思考」
    • 三日目
    1. ストリートとサブカルチャー:流用・転用・ブリコラージュ
    2. 路上の系譜:考現学から路上観察学へ
    3. 鉄道の視覚文化
    4. 都市とイルミネーション:電気の視覚文化論
    5. まとめ

講義

  • まなざし/視線と監視
    • 観者を見つめるイメージ:はたらきかける「まなざし」
    • 選挙ポスターとまなざし
    • 絵画のなかのまなざしの往還:ティントレット《スザンナの水浴》におけるまなざし
      • ストーリー:「美しい若妻スザンナが沐浴しているときに、長老二人が近寄り、言い寄った。しかし、スザンナは拒絶した。逆恨みした長老たちは、スザンナを姦通罪で訴え、スザンナは死刑になってしまいそうになる。そこで、預言者ダニエルは二人の長老を尋問し、矛盾を暴き、スザンナの無実が実証された。二人の長老は死刑となった」(旧約聖書ダニエル書外典より)。
      • 3つのまなざし
        1. スザンナを「覗き見」る長老たちのまなざし=見返されることのない「非対称」のまなざし
        2. 鏡を見るスザンナのまなざし=自らを見る:男性のまなざしを内面化したまなざし
        3. 絵を見る観者のまなざし=メタ・レヴェルのまなざし:ポルノグラフィ?
    • ジェンダー」とまなざし
      • ジェンダー=社会的、文化的に定められた性差(男らしさ/女らしさなど):生物学的な性差(セックス)とは区別される。
      • 男性優位のジェンダー構成においては、男性は見る主体であり、女性は見られる対象となる。
      • 視線の主体である男性は、「見る」という行為によって女性という「他者」を性格づける。
      • 男性(主体)は、女性(他者)に付与したそれぞれの性格(受動的、露出、イメージ、感情、神秘、自然…)の反対語(能動的、窃視、言語、理性、好奇心、文化…)を自らに付与する。
      • 「主体」とは先験的に存在する物ではなく、「他者」との関係の網目のうちに構築される物である。
      • 「男は行動し、女は見られる。男は女を見る。女は見られている自分自身を見る。これは男女間の関係を決定するばかりでなく、女性の自分自身に対する関係をも決定してしまうだろう。彼女の中の観察者は男であった。そして被観察者は女であった。彼女は自分自身を対象に転化させる。それも視覚の対象にである。つまりそこで彼女は光景となる」(ジョン・バージャー『イメージ Ways of Seeing―視覚とメディア (パルコ・ピクチャーバックス)』)。

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