初日

シラバス:比較表現論A

  • 科目の概要
    • 視覚文化や物質文化という研究領域について写真に代表されるさまざまなメディアの考察を通じて紹介する。

  • 科目のねらい
    • 1990年代に従来の美術史に対する反省や、文化研究/文化社会学の影響下に脱領域的研究分野として成立した視覚文化研究(ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ)は、英語圏の国々では、ある程度制度化され、定着してきている。本講では、その研究領域を批判的に再考し、風景/トポグラフィ、写真、考現学路上観察、ヴァナキュラー文化などの具体的な事例を取り上げつつ、また美学芸術学はもとより、考古学/人類学において再び注目されている物質文化論(マテリアル/カルチャー・スタディーズ)などの隣接領域も視野に入れて、視覚文化研究の可能性を受講生と共に探っていきたい。

  • 授業計画(以前、大学に提出したもの。受講生の関心に応じて適宜変更します)
    1. イントロダクション:視覚文化と近代
    2. 「文化/カルチャー」:意味とコンテクスト
    3. トポグラフィの視覚文化論
    4. 横浜写真と世界の可視化
    5. 「故郷」の構築:風景とノスタルジア
    6. 「古都」としての京都:マスメディアと場所性の構築
    7. 写真のアルケオロジー:写真の起源の「物語」
    8. 遺影写真論:痕跡としての写真
    9. ヴァナキュラー写真:写真と物質性
    10. 「決定的瞬間」と「すりぬけるイメージ」
    11. 採集者の系譜:考現学路上観察とストリート写真
    12. 写真家と狩人:セレンディピティと推論的パラダイム
    13. 鉄道写真論:ミニアチュールとしての写真
    14. コレクションと展示
    15. まとめ

  • 成績評価の方法と基準
    • 出席30%、レポート70%

講義

  • ロラン・バルトと文化記号学
    • 神話学:外示(デノテーション)と共示(コノテーション
      • ロラン・バルト現代社会の神話―1957 (ロラン・バルト著作集 3)
        • 「私は理髪店にいて『パリ・マッチ』誌を一冊、手渡される。その表紙には、フランスの軍服を着た一人の若いニグロが、軍隊式の敬礼をして目を上げているが、おそらくその見つめる先には、三色旗がひるがえっているのだろう。こうしたことが映像の意味である。だが、純粋であろうがなかろうが、わたしにはその映像が私にとって何を意味しているかがよくわかる。すなわち、フランスは偉大な〈帝国〉であること、そのすべての息子らは、肌の色の区別なく、その旗に忠実に仕えるということ、いわゆる抑圧者に仕えるこの黒人の熱意ほど、いわゆる植民地主義を非難する人たちに対する最良の応答はないということ。それゆえ、わたしはここでもまた、価値の高められた記号体系を目の前にしていることになる。すでに、前提となる体系(「フランス軍隊風の敬礼をする黒人兵士」)から、それ自体形成されたシニフィアンがある。それからシニフィエがある(ここではそれは、フランス性と軍隊性の意図的な混合である)。そして最後に、シニフィアンをつうじての、シニフィエの現前がある(バルト前掲書)」。
        • 二重の記号体系:「薔薇」という記号は、「bara」という音(シニフィアン)と「茎に棘があって、複雑な花弁を持つ植物」という概念(シニフィエ)から成り立つが、その「薔薇」という(喋られた/書かれた)記号自体がシニフィアンとなって、たとえば「情熱」というメタ・レヴェルでのシニフィエを指す場合。
      • 同「広告のメッセージ」『記号学の冒険
        • 「アストラで黄金の料理を」という広告の場合:共示が外示を隠蔽する
      • 同「映像の修辞学」『第三の意味―映像と演劇と音楽と』:パンザーニ社の広告の分析

https://satow-morihiro.hatenablog.com/


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19年度前期芸術学A視覚文化論デザイン論特講1デザイン理論特講(大学院)/a> 講演、特別講義など

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