神戸大集中講義 3日目

セレンディピティと推論的パラダイム

  • 路上と痕跡:考古学的想像力
    • セレンディピティ=ちょっとした徴候から推論して解答に至ること
      • 三人の王子が旅の途中でラクダを曵いた商人に出会ったとき、ラクダそのものを見ないで、その足跡や道端の草の食べられた跡などから、ラクダの身体的な特徴を的確に言い当てた(中東の民話「セレンディップの三人の王子」より)。
    • 推論的パラダイム
      • さまざまな近代科学(臨床医学など)に見られる知の枠組み
      • 「人は何千年もの間、狩人だった。そしていくたびも獲物を追跡するうちに、泥に刻まれた足跡や、折れた枝、糞の散らばりぐあい、一房の体毛、からまりあった羽毛、かすかに残る臭いなどから、獲物の姿や動きを推測することを学んだ。人は絹糸のように微細な痕跡を嗅ぎつけ、記録し、解釈し、分類することを覚えた。人は密林のしげみや、罠でいっぱいの林間の空き地で、こうした複雑な精神作業を一瞬のうちに行えるようになったのである(カルロ・ギンズブルグ「徴候--推論的範例の根源」『神話・寓意・徴候』)
    • 推論=アブダクション
    • ビッグ・データと相関
      • 観相学・人類学・司法写真
        • アルフォンス・ベルティヨンからフランシス・ゴルトンへ
      • 推論的パラダイムの終焉?

アーカイヴ(ズ)を考える

トポグラフィ論

  • トポグラフィ(場所の表象/場所への書き込み)という視覚文化
  • 「風景」とはなにか?
    • 「風」「景」「光」
    • 山水画/名所絵/風景画
    • landschaft(独)/paysage(仏)/landscape(英)
    • 文化的実践としての風景
      • 心象地理=なじみ深い「自分たち」の空間と、その自分たちの空間の彼方にひろがるなじみのない「彼ら」の空間とを心のなかで名付け区別する実践(サイードオリエンタリズム』)
      • 風景=ヨーロッパ近代において成立し、その覇権の伸張とともに世界中に広がったもので、幾何学的遠近法をベースとして、自己(主体)と環境(客体/他者)を視覚的に媒介する表象=意味付けのシステム
      • 名所から風景へ
        • 「風景の発見」(柄谷行人日本近代文学の起源 (講談社文芸文庫)』)
          • 名所絵の見たもの=「実朝も芭蕉もけっして『風景』をみたのではない。彼らにとって、風景は言葉であり、過去の文学にほかならなかった」
          • 「風景がいったん成立すると、その起源は忘れさられる・・・それは、はじめから外的に存在する客観物のようにみえる。ところが、客観物なるものは、むしろ風景のなかで成立したのである。主観あるいは自己もまた同様である。主観(主体)・客観(客体)という認識論的な場は、「風景」において成立したのである。つまりはじめからあるのではなく、「風景」のなかで派生してきたのだ」
      • 正岡子規と叙事文
      • 柳田国男の風景論
        • 風景はもと今日の食物と同じように色や形の後ろに味というものを持っていたのみか、さらにこれに伴うていろいろの香と音響の、忘れがたいものを具えていたのである。それを一枚の平たく静かなものにする技芸が起こって、まずその中から飛び動くものが消え去った。(『明治大正史:世相篇』)
        • 〔さまざまな「風景」を〕静かに眺めて居ることは、「汽車の窓」にしてはじめて可能である。或はまた「要望なき交渉」と名づけて良いであろう。捕らうといふ気にもならぬ小鳥、摘んで食べようとも思はない紅色の果実が、あゝ美しいといつて見られる場合は、弥次や喜多八の時代には、さう沢山には遭遇することができなかったのである。(「豆の葉と太陽」)
        • 洋画も〔中略〕いわゆる埃箱の隅でも描いていいという流儀が、卒然としてはじめて頭を擡げることになった。〔中略〕大きな事実は、徐々に実現してきた風景観の解放であった。/昔の旅人が詩歌・文章に写し出すことができて、伝えて置いてくれたものは一部であったということもわかって来た。〔中略〕写真も素人のいくぶんか不細工なものが、画以上に盛んにこの発見を進めて行こうとして居るので、人はとにかくに非常に風景というものを心安く、かつ自由に楽しむことができるようになった。それはいずれもみな明治大正の世の、新しい産物といってよいのである。(『明治大正史:世相篇』)
    • 風景写真と「観光」

音楽コーナー


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